西岡春菜さん

 16歳から24歳の精神障害のある方やメンタルヘルスに悩みのある方が共感と理解を得られる場を提供する『一般社団法人NeBA』。Never Be Aloneの略だ。

 現在は大学院生の西岡さんが、大学1年生の時に立ち上げた。高校1年生の年齢からを対象としたのには、明確な理由がある。
 高校時代に、周囲で、自閉症があって、家庭環境にも恵まれず自死行為に走り、高校生活からドロップアウトしていく同世代を目にした。
 「今日生きていた友人が、明日生きていないかもしれない」。そんな強烈な想いが法人を立ち上げる原動力になった。

 悩みを話せる場づくりから始まった取り組みは、管理面や資金面での苦労に直面しながらも、現在まで4年間続いている。
 西岡さんは「確実に成果が上がっている」と自信を深める一方で、世の中を見れば、自殺のニュースは尽きず、自殺者数の統計に気が滅入ってしまう。一つの組織を運営しても、「まだまだ届いてほしい人に届かない」「助けを求める力もないような人に届かない」というもどかしさが拭えなかった。

 そんな西岡さんが、サポートを届ける先を増やそうと取り組んでいるのが、『障害者雇用定着支援プログラム』。
 障害のある当事者と専門家がタッグを組む「専門家チーム」が企業に入り、外部チームの当事者と企業の中で働く当事者が話し合う。「分かり合える立場から引き出した悩み」を専門家に共有し、専門家から企業側に対して定着に向けた助言をする仕組みだ。
 その成果は既に研究発表もされるほどで、今後は企業や自治体への導入加速を通じて、障害者の法定雇用率達成企業の割合の低さや雇用後の定着率の低さといった社会課題の解決に貢献したい。

 さらに現在は、就労支援施設の運営に着手する準備も始めている。一般的に「就労支援施設は青年期向けのものが多くない」点に着目し、若年層限定でキャリア支援やサークル活動やピアサポート学習などのカリキュラムを検討中だ。

 そして2024年4月には、『一般社団法人NeBA』とは別に、「マイノリティ全般に関して学際的に研究及び活動できる組織があったら」という問題意識の下、学内を中心にした『マイノリティ研究所』を設立。この分野の研究者と産業とをマッチングし、研究成果の社会実装を進めていく。

 改めてだが、こうして障害やマイノリティといった社会課題に愚直に取り組み続けている西岡さんは、まだ大学院生だ。将来は、研究者として、そして事業家として、二足の草鞋を履くキャリアも見据えている。
 しかし、こういったテーマは、まだまだ「自分に関係がないと目が向かない」現状もある。海外のように非営利団体として寄付で運営していけるような文化も日本にはまだ根付いていない。

 そんな中で、どうしたら西岡さんの挑戦を応援できるか。純粋に法人の事業として、何より企業や自治体自らの利益として『障害者雇用定着支援プログラム』を利用してもらうことだろう。
 資金や体制に余裕がある大企業だけではなく中小企業にも、そして自治体にも、一つでも実証事例が生まれることで、次が生まれる。そうした事例が増えることで西岡さんの活動の存続につながることはもちろん、障害やマイノリティといった社会課題に取り組む活動や研究全体への機運も高まる。
 まず、自分の職場や地域のために、『障害者雇用定着支援プログラム』を試してみたい方がおられれば、是非ご連絡ください。その一歩が、さらに先の社会全体への支援にもつながっていきます。
 

【一般社団法人NeBA】https://inclusive-hub.com/pages/180
【マイノリティ研究所】https://pink008365.studio.site/