ぶちょうさん

 彼女がぶちょう(部長)を務めるのは、「議論メシ編集部」。
 それは「隠れた才能を発掘しよう」というコンセプトの元生まれ、多様なバックグラウンドを持つ600名以上のメンバーが参加する「アウトプットコミュニティ」。設立から5年間で50冊以上の書籍を出版、noteは年間47万PVを記録し、Peatixコミュニティアワード2025『オンラインコミュニティ賞』にも輝いた。

 そのコミュニティを運営するぶちょうさん自身も、とんでもない。
 その優秀さから大学-大学院の6年間にわたり学費免除、東京大学大学院で専攻した国際協力学の修士論文で専攻長賞を受賞、さらに英語やフランス語や中国語、フィリピン語(1年間フィリピン大学に交換留学)も堪能という異才ぶりだ。

 しかし、ここからが重要だ。

 ぶちょうさんは、とにかく運動が苦手で、書くことや現代文や英語は得意でも「数学がからっきし」。空気を読めない言動などから、小中高でイジメられてきた。
 「私が悪いのだろう」と思い続けてきた。
 それでも、学校から家に帰ってお笑いを見れば「学校より楽しいことは世の中にある」「大人になればやりたいことを体現できる」と思い、「苦しい感覚はなかった」。同級生と楽しむ気もなかった修学旅行を抜け出して、渋谷のスクランブル交差点で班員から逃れて一人でルミネtheよしもとに行ったのが中学校で一番楽しかった思い出である。
 学校ではいじめられ吹奏楽の部活動でも叱られることが多かったが、家に帰ってコント番組やお笑いの番組を観た。また明日お笑いの番組を観る為に生きよう。ぶちょうにとってその時から今でもお笑いは「世の中を照らす光」だ。

 大人になっても、すんなりいくわけではなかった。職場ではメールの送り先を間違えるようなケアレスミスが多く、残業の多さも相まってメンタルを悪化させたこともある。社会に出て一般雇用で6年間経験を積んだ際、仕事の帰りの電車で毎日涙が止まらなかった。
 「30歳以降働けるようになりたい」と思って勇気で臨んだのが障害者雇用。「では最初から障害者雇用で良かったのでは」と思ってもいるが、一般雇用で仕事の経験を積んでこその今の継続雇用だと思っている。障害者雇用で働いて7年目になった。

 背景は、ADHD(注意欠如・多動症)。それでも、いや、だからこそ、かもしれない。冒頭でご紹介した活躍ぶりだ。

 「なぜ、そこまでやり切れるのか?」と聞くと、最高の答えが返ってきた。「最近気付いたのだが、親に否定されたことがない。「勉強しろ」とも言われたことがない。自己肯定感が強く、何とかできるだろうという自己効力感も強い。」

 気持ちだけではない。「諦めずに頑張るだけ」。
 ケアレスミスが多ければ、ダブルチェックで減らす。ミスしたら「誰でもミスはするから『ミスをした後のリカバリー』の方が重要。「しょげずに謝罪に修正を含めてリカバリーする」ことを心掛けた。
 職場探しも正社員でリモートワークできる会社に絞り、優秀な人を真摯に真似るなど自分の能力を磨き続けた。現在は、自宅から英語を使いながら海外プロジェクトのマネジメントに取り組む。

 「自分と環境は50:50」
 環境のせい(100)にしてしまうと自分(0)の成長がなくなってしまう。なので「自分と環境は50:50」が丁度良いと考えている。環境に配慮を求める分、同じくらい自分も努力や成長が出来る。

 同じADHDのある周囲の友人は、休職したり仕事がなかったり「9割落ち込んでいる」。「ぶちょうだから出来るんだよ」と言われることもある。そう言うのは障害者も健常者も一緒だった。それでも「しょげるな、何とかするしかない。コツコツやっていけば道は拓かれる」と言いたい。

 「今は人生を120%楽しんでいる」と言い切る。それは、ぶちょうさんが、他人と比べることに一喜一憂せず、好きなことを徹底的に勉強し、自分の強みの部分を活かし研ぎ澄ましてきた結果だ。「自分の”推し活”をして、自分の人生を生きている。」
 今度は自分が「世の中を照らす光」になりたい。
 ぶちょうさんの本当のすごさは、冒頭の成果ではない。その裏にある考え方と行動だ。

【議論メシ編集部について】https://note.com/yoshidaaya0109/n/n4062bf8c2f9c
【ぶちょうさんの自己紹介】https://note.com/yoshidaaya0109/n/n1f159a856692