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鷹林さんは、生まれつき弱視でおられる。弱視と一言で言っても「視力の数字が同じでも人によって見え方は違って、その違いは障害者手帳の等級には表れない」と教えてもらった。
例えば、鷹林さんは、眼球が痙攣したように動いたり揺れたりする「眼球振盪(がんきゅうしんとう)」という症状をお持ちで、文字が大きくないと見えないだけではなく、「馬」など4本も5本も線があるようなゴチャゴチャした文字を読むことも難しい。
「墨字(すみじ)」という言葉をご存じだろうか?視覚障害者が使用する「点字」に対して、点字ではない文字のことを「墨字」と言う。
盲学校には幼稚部から通っていた鷹林さんは、小学部1年時に先生から「墨字か点字か、どっちを選ぶ?」と聞かれ、その後、カタカナなど独自で習得する努力はしたが「墨字を習うことはなかった」。
それでも、「社会性を身につけた方がいい」というアドバイスを受けて、同様に挑戦してきた「パイオニアの先輩方がいたので、やってみようと思い」、高校は点字入試で受験し、盲学校から一般校に転じた。
しかし、なにぶん高校生である。中学から友達グループで上がってきたクラスメイトと鷹林さんでは「お互いにどう声をかけていいかわからず、あまり溶け込めなかった」。
鷹林さんの目はぼんやりとは見えるが、相手の顔はわからない。同じ制服が並ぶ中で「誰誰さんいる?なんて自分から口に出せず、相手の声や背の高さやいそうな場所などで何とか反応した」。
勉強の面では、一般校の教科書を視覚障害生徒のために点字に訳してくれるボランティア組織のおかげで同じように学ぶことができた。鷹林さんはそのことに感謝を述べつつ「昔はそうしたボランティアの担い手が多かったからできたけれど、今後10年20年経ったらどうなるか」と、今度は自分に続く後輩が置かれる環境を心配されているようだった。