宮崎舞さん(前編)

 発達障害の一つである学習障害(LD)の子どもたちの学びのために様々な情報を提供するサイト『カラフルバード』。学習障害を知るための情報はもちろん、必要な検査や適切な学習方法が紹介され、さらにそういった情報を充実させていくためのデータバンクの仕組みまで整っている。
 Xでつながった学習障害の子どもをもつ保護者を中心に「苦労してきた経験を他の方々にも共有したい」と、サイトを立ち上げ、ここまで充実させてきた。

 宮崎さんは、立ち上げメンバーの一人。娘さんとの経験を聞くと、このサイトの重要性が見えてくる。
 
 担任の先生から「字をぐちゃぐちゃに書き、ノートも取れていない」様子であることを知らされたのは、娘さんが小学2年の時。
 学校のスクールカウンセラーに相談しても『学習障害』にはたどり着かず、自治体の窓口に相談しても対応してくれる心理士は特別支援教育に詳しいわけではなかった。
 発達障害の病院にもかかるが、得意分野はASD(自閉症スペクトラム障害)。「教科書を読んでみて」と言われ、娘さんは読めてしまい、ここでも『学習障害』にはたどり着かなかった。

 そうした中、宮崎さんはご自身で娘さんの特徴に気付き、『ディスレクシア』を疑うようになる。『ディスレクシア』とは、学習障害(LD)の中核症状であり、会話の理解や表現は普通にでき、知的にも問題ないが、文字情報の処理/読み書き能力に著しい困難を持つ症状を指す。
 そこから偶然見つけた大学の研究参加によって検査をすることができ、読めるけど書けないだけだと思っていた結果は「そもそもがっつり読めていなかった」。こうして宮崎さんと娘さんは、ようやく『ディスレクシア』という原因にたどり着いた。
 
 原因がわかれば対処できるが、ここも簡単ではなかった。
 ディスレクシアは前述の通り、通常行動に問題がなく、ある意味「学校の先生などが困る類の障害ではない」。例えば、他に情緒不安定な生徒さんなどがいれば、そちらの支援が優先される。また、ディスレクシア自体やできる支援について詳しい先生も少ない。
 教員以外で支援を求めるべきは、「言語聴覚士(ST)なんだと気付くのに、1年かかりました」と宮崎さんは振り返る。米国では制度として学校現場に言語聴覚士が配置されているが、日本にはその制度がない。
 じゃあ、民間のサービスを頼れないか。しかし、自治体に聞いても、公平性を考慮し過ぎて何も教えてくれない。「情報の出し惜しみしてもいいことはないのに」。

 こうした宮崎さんのみならず他の保護者の方も含めた経験を背景に立ち上がったのが、冒頭でご紹介した、学習障害(LD)の子どもたちの学びのために様々な情報を提供するサイト『カラフルバード』だった。

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